1300hit御礼SS リクエスト:ロイアイで「デート」
極秘任務 前編
「あの・・大佐。腕を組むのはとても・・・歩き辛いのですが。」
「仕方ないよ、ホークアイ中尉。それらしく見えなければならないのだから。
腕が嫌なら手に代えようか。」
「・・・はぁ。」
腕が解かれ、手を繋がれる。多少歩きやすくなったが気恥ずかしさは変わらない。
少しばかり目線が上になる相手に視線で訴えたが、眼鏡の奥の黒曜石は満足気に笑っただけだった。
今、私はマスタング大佐と『恋人に見える様に』市街を歩いている。
もちろん軍服ではなく私服である。私はベージュのシャツにブラウンのジャケットとロングスカート。
タイトだが脇には深めのスリットが入っているので、もしもの時は内股に隠してある愛銃を容易に手に出来る。
大佐はグレーのタートルネックに黒いジャケットとパンツ。
そして、髪形を少し弄り、普段は掛ける事のない眼鏡を掛けていた。もちろん伊達だ。
しかしそれだけで大分印象が変わったようで、街中をあの大佐が歩いているにも関わらず、声を掛けてくる女性はいなかった。
この状況、端から見れば完璧に『デート』だ。
しかしこれは『任務』である。
大佐いわく『極秘任務』との事。
私にはこの任務の目的も今後のスケジュールも知らされていない。とにかく『恋人』に見えなくてはいけない、らしい。
まったく一体どんな任務だというのだろうか。
それにしても、複雑な気分だ。
確かにこの状況は気恥ずかしいが、正直、嬉しい。
大佐とは上官と部下で、背中を任されている。が、それ以上でもそれ以下でもない。
尊敬しているし愛してもいるがそれ以上は求めない。それを望むのは数々の浮名流れる相手に無駄な話だ。
しかも私は今の副官の位置が心地いいのだ。不毛もいいとこだけど。
逆に手を繋いだくらいで嬉しくなれる自分に驚いていた。
まだそんな初々しい感情があったのか、と。
だが喜んではいられない。
これはあくまで『任務』なのだから。
「大佐、そろそろ任務の内容をお教え頂けないでしょうか?」
出勤前に直接自宅から連れ出されて今に至る。世間はそろそろランチに差し掛かる時間だった。
「・・・そうだな。説明しがたいのだが・・・強いて言えば、視察、だな。」
少し考えながら大佐が言う。
「・・・視察、ですか?なら私服でなくとも・・・」
「中尉、服一枚で見える世界が違うのだよ。軍服を纏えば相手の出方も変わってしまう。
何でもない一般人として街を見る必要があるんだ。」
真っ直ぐにこちらを見返す。まだ反論すべき事があったのだが、口からは出てこなかった。
その闇色の瞳に、捕われてしまったから――――
その後私達はランチを取り、大通りを巡った。
大通りの両脇には様々な店が列なり多くの人間が行き交っている。平日の昼間に市街をゆっくり歩くなんてどれくらいぶりだろうか。
賑わう街が楽しげに、降り注ぐ陽射しが暖かく、触れ合う人々が優しく感じるのは不思議な感覚だった。
それはいまだ解かれる事なく繋がれた大きな左手のせいだろうか。
ただ、その手に導られ訪れた店々が若い女性が好みそうな場所ばかりなのが気になった。
何か特別な意味があるのだろうか。視察の真意が『何か』の調査だとしたら――――どのようにサポートすべきか。
しかしそれなら何故なにも言わない?
解らなければ何も出来ない。
それとも試されている?
思案にくれて、その横顔を盗み見ると偶然にも目が合ってしまった。
ふわり
と微笑む彼に、また、捕われた。
それは見た事もないくらい甘く優しいものだった。まるで――――
――――勘違い、してしまいそうになる。
いけない、それは。
「どうした、中尉?」
柔らかく響く低音。
毎日聞き慣れてるはずの声が全く違って聞こえる。
「っ、何でもありません。」
慌てて顔を背けた。耳も塞いでしまいたかった。
「中尉?」
「何でもありませんから!!」
熔け出した声が浸透してしまう。抑えていた感情が溢れてしまう。
鼓動が、高鳴ってしまう――――
「やはり、デートの相手が私ではのはつまらないかな。」
「そんな事はっ!!」
顔を上げると大佐は悲しげに微笑いた。
――――そんな顔しないで。
必死に言葉を探すが飽和状態の頭には何も浮かばない・・・と、重大な事に気付いた。
今『デート』と言わなかった?
「・・・大佐、デート、ですか?」
一瞬目を見開く顔と、ぐっと息を飲む音が聞こえた。
「それは、言葉のあやだよ。」
引き攣った笑顔が何よりの証拠だった。
どんっ!!
考えるより先に手が出ていた。
気付くと数歩下がって中途半端な態勢をとっている大佐が見えた。
その顔は突き飛ばされた事が分からない程ほおけている。
「っ、もう知りません!!」
言い放ち走りだす。
「中尉っ!!」
呼び止める声は聞こえたが止まることは出来なかった。
・・・to be continued
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ゴメンナサイっ!! 長らく待たせたうえに続きます・・・続いちゃいます・・・ゴメンナサイ。
頑張って近い内に完成させますので・・・もう少々お待ちを(平伏)
緋月悠奈