中途半端な位置


「寂しい」と言える程若くなくて、「抱いて」と言える程素直じゃなくて「別れて」と言える勇気は毛頭ない。

 

気付けば私は、至極中途半端な位置に立っていた。

 

部下で副官で恋人、だけど極秘。

オフィスラブなんて可愛い事言ってられない。

上に行けば行く程、相手の粗を探して弱みを握り、足を引っ張り蹴落とそうと躍起になる。上官で恋人はそんな世界に立ち向かっているのだ。

自分の強い信念と数名の信頼出来る部下を連れて。

そんな大佐の弱みにならないように、職場はもちろん外でだって気を使わなくてはいけない。

普通の恋人達が当たり前の様にするデートは無論無理。家に行く事さえ気軽になんて難しい。

それに休暇だって重ならない様に組まなくてはいけないから、ゆっくり二人切りでなんて有り得ない。

日々顔は合わせてるが、仕事場である以上何がある訳でもない。

 

本当に中途半端。

 

これで恋人って言えるのかしら。

ただの部下に戻ってしまった方が楽なんじゃないか、時々そう思う。

 

自分が想ってる程、相手は想ってないんじゃないか、と。

 


それでも、試す様に確かめる様に交わすキス、絡めた指、耳元で囁く言葉、

全身を愛撫する手が、激しく揺さ振られる身体が、中に吐き出される欲情が私に教えてくれる。

 

相手も同じ気持ちだと――――


 

本当に中途半端な位置だけど、ここ以上に良い位置も他にはない。

普通の恋愛は望めないけど、それ以上の絆がここにはある。

それに、大佐の存在自体が私の夢であり未来であり、生きる目的だ。別れるなんて発想自体、本当に馬鹿げた話だった。

 

 


私は幸せに慣れ過ぎたのだろう。

欲張りになったものだわ。傍にいられるだけで幸せだった頃を忘れていた。

あの頃の自分を思い出すと実に健気に思えて少し笑ってしまった。

「どうした、中尉?いきなり笑い出して。」

書類と格闘していた大佐が顔を上げた。

「貴方の事を考えてたんですよ。」

珍しく素直に出てしまった。
「えっ?」
一瞬目を丸くしたが、私の表情を見て微笑んだ。

「そうか。幸せ者だな、私は。」

 

上官は恋人の顔で微笑んでいた――――


  End

 

 

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近過ぎると分からなくなる事ありますよね? でも一歩下がると思い出す。遠かった頃を。

そして傍にいる事の幸福さを思い出すんです。

 

そんなモンですよね?

 

緋月悠奈