月城課題:ハボエドとソラリス
片想い追走曲
走る走る、想いは走る。彼の人の背中を見ながら。届きそうで届かない。
走る走る、想いは走る。振り返る事は出来ない。彼の人を振り返させる為。
走る走る、想いは走る。
走る走る、走り続ける――――
第一走曲 奔走
電話ボックスでダイヤルを回す少年が一人。
その表情はどこか楽しげである。少年は金髪金眼、赤いコートに右手左足は機械鎧。
それは「鋼の錬金術師」の二つ名を掲げる最年少国家錬金術師、エドワード・エルリックその人だった。
彼は今、一つの義務を果たそうとしている。
彼にはいくつかの義務がある。それは国家錬金術師である以上仕方ない事だ。ただ、縛られる事を嫌う彼は当然その義務が大嫌いであった。
しかし、一つだけ「面倒臭い、嫌いだ」と言いつつ欠かさない義務がある。それは「報告」だった。それも「電話」を使用した報告だ。
定期報告はもとより臨時報告もきちんと行う。
弟のアルフォンスが不思議に思い理由聞くと「旅をする事が研究と見なされるから報告せざるをえない」ともっともらしい事を上げたという。
しかし、彼が報告を怠らない本当の理由はもっと別な所にあった。
それは――――
『おー大将!!元気にしてるかぁ?』
自分のコードを伝えて待つ事数十秒、底抜けに明るい声が電話口から飛び出して来た。
声の主は一発で解る。聞き間違う筈はない。いつもこの声を聞きたいが為に電話をかけているのだ。
勝率の悪いエドワードの小さな賭。知っている者は毎度笑う。それでも彼はやめなかった。それは一つの希望だったから――――
その秘密の賭に今日は見事勝利したのだが、エドワードは嫌な予感がした。
いつもなら明るいが少し面倒臭そうな声で話すのがこの声の主――――ジャン・ハボック少尉の普通である。
なのにこの底抜けに明るい声。
何かあると感じたエドワードは、いつもなら世間話を楽しむのだが今日は早々に切り上げる事にした。
「あぁ、元気だよ。なぁ大佐に...」
『解ってるって。まぁそんなに焦んなよ。俺の話を聞けって!!』
勘がいいエドワードだ。彼の機嫌の良さから話の内容に見当がつく。嫌な内容だ。出来れば触れたくはない。
「もうすぐそっちに行くからその時聞くよ!!だから...」
『だったら今聞けよ!!聞いて驚け〜。ついに彼女ができたんだー!!』
が、世の中そう上手くはいかないものだ。
彼の制止は強引に崩される。エドワードは受話器を握ったまま固まってしまった。
『それれがさ〜、引越したばっかの俺に親切にしてくれてさ。
黒髪の長い美人で、切長の勝ち気そうな目が印象的なんだよ。しかも、すっげぇスタイルよくってさ。ボインだぜボイン!!』
ハボックはエドワードがショックを受けてるとは気付かず、興奮して新しい彼女自慢を始めている。
鋭い勘のおかげで多少の心積もりが出来たとはいえ、エドワードは突然「失恋」したのだ。ショックである事には変わりない。
彼の自慢を遠くに聞きつつ乱れた心を必死に繋ぎ合わせていた。何か言わなくては。頭ではそう思っても何も浮かばない。
それよりも大きな喪失感が身体を支配してうまく考えられなかった。
「...よかったね。」
彼の話はまだ続いていた様だが、心にもない一言をようやく絞り出してエドワードはそのまま電話を切った。
聞きたい声から聞かされた聞きたくない事実。電話機を見つめたまま唇を噛み締める。
実る筈のない恋をしてる自分に、締め付ける様に苦しくなる心臓に、嘘でも喜んだ声を出せなかった喉に、
ハボックの心を射止めた女に、タイミングの悪いハボックに、理不尽な苛立ちを覚える。
全ては不可抗力。
解っていてもどうしようもない想いに心が掻き乱されて仕方なかった。右手がギシッと音をたてる。噛み締め過ぎた奥歯に感覚はなかった。
口の中に苦い鉄の味がしてエドワードは我に返った。
どうやら口腔を噛み切ってしまったらしい。今の自分の心境の様に止め処なく苦味が蔓延する。
あのまま何も感じなくなればよかったのに。
再度押し寄せる心の痛みと喪失感に、全てを捨ててしまいたい気分だった。
――――それでも、涙は出なかった。
...to be continued
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何かうまく終われなかった、エドワードsideです。消化不良。
課題はハボエドだったんですが、エド→ハボになってます。更に別の人が加わります。あわわ。
よろしければ次も・・・というか最後まで・・・お願いします。
緋月悠奈