ハボロイ好きに15のお題
お題: 8 煙草

 

   反比例の1mg


「ハボック。煙草。」

殺気立った東方司令部執務室。

書類の山を届ければ、文句の代わりに要求が発せられた。

――――ストレス最高潮か。

眉間のシワが彼の苛立ちを物語る。

それもそうだ。

今回は彼がサボって書類を溜め込んだ訳ではなく、全て書類不備による訂正処理。

しかも彼に対する妬みからの、わざとの書類不備だった。


馬鹿らしいがこういった上官からの嫌がらせは、ほぼ回避できない。

そういう仕組みなのだ、軍というものは。

それを解っていてもこの量だ。苛立たない訳がない。
丸一日このくだらない作業に費やされた彼の忍耐は今や限界にきているようだ。

それで、煙草、ね。

普段は吸わない煙草。限界が近いサイン。副官にもあまり見せない姿。
俺が喫煙者だから言うのか、それとも恋人だから言うのか、それは定かではないけれど。

「アイサー、ちょっと待ってて下さい。」

俺は書類の山を置き、身を翻す。

「持ってないのか?」
「すぐ戻りますんで。」

意外そうに掛けられる声に肩越しに応えた。



自分のデスクの一番上の引き出し。色々な物に混じって入っている煙草を取り出す。

まだフィルムを剥いてない真新しいモノ。
俺はそれと灰皿を手に、再び執務室に舞い戻る。


コンコンと軽くノックしドアを開くと、先程より剣呑になった黒曜石に出迎えられた。

「お待たせしました。」
「・・・わざわざ新しいのを持って来たのか。お前のでよかったんだが?」

差し出された封も切られていない箱を見て溜息をつく。

何でそんな面倒な事をしてるんだ?と不機嫌な瞳が語った。

それを見て俺も溜息を一つ。

受け取られてない煙草をデスクに置いた。

「俺のはかなりヘビーなんすよ。どうせこれから一箱近く吸うんでしょ?

たまにしか吸わない人間にとって、いきなりアレはキツイばっかで何の得にもならないっす。

疲労のごまかし、眠気覚ましに使いたい大佐にはこれくらいでちょうどいいんすよ。」

それから灰皿もコンと置いた。


大佐は怪訝そうに箱を手に取り、側面を見る。それから苦笑した。

「いつから上官思いの部下になったんだ?」
「恋人想いなんすよ。」

さらりと言い返すと、一瞬瞳が見開かれそして穏やかになった。

それから彼は箱の封を切り、ゆっくりと煙草をくわえる。

見慣れない仕種でも絵になる男だ。


「・・・愛されたものだな。」
「何をいまさら。」

愛用のオイルライターで火を点けてやりながら苦笑する。

「それから、ホントは、あんまりあんたにそれ吸ってほしくないっす。健康に悪いから。」
「・・・お前がそれを言うな。」
「言ったって聞かないのはお互い様、でしょ?」

だからせめて軽いのを。

「・・・重い煙草だな。」


薄い紫煙と共に吐き出される呟き。

しかし言葉とは裏腹に表情は柔らかな微笑。

「愛の重さっすよ。」

にしゃっと笑うと、同じ煙草を勧められた。
慣れた手つきでそれを吸う。いつもとは違う煙草は軽すぎて味がしなかった。

「反比例だな。」


彼の呟きと共にコツンと弾かれた箱。

中の煙草はタール1mg。

でも、二人で吸っているのは「重い」煙草。


反比例するのは――――



もう一度深く吸い込む。

 

――――今度は、ほのかに、甘く感じた。


End

 

 

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久々にSS書きました。 が、スランプ続行中っぽい・・・

 

 

うちの大佐はたまに煙草吸います。そして研究中は時々メガネで。

あと甘いモノはちょっと苦手。お酒は程々。そんなイメージです。でも相手によって違うかも(おいっ!!)

 

ハボは、絶対、重たい煙草吸ってますよ!! タール12mgぐらいのヤツ!!

お酒は酔ってハイになったりするけれど、酒豪の方向で。

 

  緋月悠奈